EP1-Sub05 魔女の入学条件

創作 第一章Subストーリー
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最高ランク : 14 , 更新: 2023/10/14 9:19:17

とりあえずわたしは、今夜はソリエルの家に泊めてもらうことになった。
急なことで部屋が用意できなかったらしくて、今晩だけはソリエルと一緒の部屋に寝かせてもらうことに。
そしてわたしがしばらくソリエルの家に住ませてもらうことになったのは、ついさっきのこと。

「お世話になります。…なんか、自分で学校に行きたいって言ったのに、今後のことあんまり考えてませんでした…この世界で住むところとか、自分で見つけられるわけないのに…」

「なに、気にするな。部屋ならまだ余っているし、うちには金の余裕もあるしな。」

「ってか、私らが追い出したらお前泊まるとこなくなるじゃん。そこまで薄情じゃねぇよ…」

本当、優しい人たちでよかったぁ〜……ソリエルとの初対面が印象最悪だったのは置いとくとして。

「さて、私は少し用があるから、今から出てくよ。すぐに帰ってくるから二人でお喋りでもしておきな。」

「ああ。」

「分かりました〜」

そのままわたし達は部屋で寝て。この世界に来て初日、なんとか無事に過ごすことができたのでした……






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「うぅーーん…よく寝た!」

次に目が覚めたらベッドの上、隣で寝てたソリエルもちょうど起きたところだったらしい。
ここで朝を迎えたのははじめて。元の世界でのことはまだ全部思い出せてないけど、朝の空が爽やかな水色だってことぐらいは覚えてる。
でも、ここの世界の朝は…カーテンを開けて見えた空は、真夜中みたいに真っ暗だった。

「わぁ、ここってずっと真っ暗なんだ…今って本当に朝なんだよね?」

「当たり前だろ、今は朝の9時だぜ?フツーに朝だよ。」

「思ってた以上に朝だった…」

昨日、家に連れてきてもらったのが夕方6時位だったらしいんだけど、空の色がほんとにぜんっぜん変わってない。真っ暗。

(そっか、ここは本当に別世界なんだ…)

やっぱり凄いなぁ、別世界って、って思ってたら、部屋がコンコンってノックされた。
昨日の夜ソリエルと話してて分かったんだけど、この家にはソリエルとアイグレーさんしか住んでないんだって。だから、入ってきたのは勿論アイグレーさん。

「起きたか?行くぞ、ソリエル、ユーカ。」

「アイグレーさん、おはようございます!行くってどこに?」

ふわああ、って大欠伸したソリエルと、朝からどこに?って思ってるわたしを交互に見て、にっと笑ったアイグレーさんは、こう宣言した。

「今日は街へ出るぞ!行き先は、お前が学校に入るために必要なものが売ってる所だよ。」









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「ソリエル、学校に入るために必要なものって、アイグレーさんが昨日言ってた魔女服と、魔具っていうやつだよね?」

「あぁ。うちの学校はやる気と魔力さえあれば入れるし、試験とかもねぇよ。」

「へー!良かった!…あ、でもわたし魔力とか分かんないな…本当にあるのかな?そんな力。」

「私にもお前の魔力の事なんかわかんねーよ。でも、なんか魔力とか、センザイ能力?ってのを測るための専用の魔術とかあるらしいぜ。」

「凄いねそれ。すごい便利そう……
って、あれ?ここは?」

三人で外を歩いてたら、いつの間にか見慣れない場所に着いたみたい(わたしにとってはほとんど見慣れない場所ではあるんだけどね)。

「さて、着いた。紹介しよう、ここが魔女として生きる者がまず行くべき場所、魔具店(マジックアイテム・ショップ)だ。」

さっきまで喋ってなかったアイグレーさんが初めて振り返って喋った。二人で話しすぎちゃったかな。

(それにしても、マジックアイテムって魔具のこと?じゃあ今から魔具を買うんだ…どんな感じなんだろう?)

「おわ、久しぶりに来たなここ…スケイラーショップ…」

(スケイラーショップ…スケイラーって人が店主さんなのかな?)

「さて、私はここまでだ。後は二人で見ておいで。」

「え?アイグレーさん、昨日も出かけてましたけど、また何か用事が?」

アイグレーさんはわたし達を交互に見てから肩をすくめた。参った参った、って顔してる。

「その通り、大人の私は忙しいのさ。ここの店主は初心者魔女にはとーても優しいヤツだ。別に私がいなくたって平気さ。」

「や、確かに優しいかもしれねぇけど、あの店主……」

もごもご文句を言ってるソリエルをガン無視して、アイグレーさんは空に向かって思いっきりジャンプした。
…ジャンプ?

「あ!?ちょっ、ばーちゃん!!」

「後は任せたぞ〜先に家に帰っておけよ〜」

なんと、アイグレーさんはあっという間に、空高く飛んでって、空に溶けて見えなくなっちゃった…

「えぇ…空とか飛べるの…?しかもホウキとか無しで…?なんかイメージと違う…」

「魔女ってそんなもんだぞ?」

何だか凄すぎてちょっとドン引きしちゃった。しょうがないよね…







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気を取り直して。わたし達は早速、お店に入店。

「こ、こんにちは〜…」

扉を開けると、ちょっと薄暗いけどあったかい雰囲気の空間が。
大きな杖とか、小さな手のひらサイズの何か(何なのかは分かんなかったよ)とか、たくさん並んであって……そして、真ん中奥にいた。店主さんだ。
奥のカウンターにいたメカクレの店主さんがちょっとはにかむと、そのまま後ろを向いて、両手で抱えられるくらいの大きさの大きなボードを持って振り返った。何だろう?

『初めまして★ぼくの名前はヴィラ=スケイラー。ここの店主だよ〜★』

「わっ!?」

全く手を動かしてないのに、店主さん―この人曰く、ヴィラ=スケイラーさんが持っていた大きなボードに、勝手に字が!?

「すご、これも魔法!?いや魔術?」

「驚きすぎじゃね?」

ソリエル、超辛辣。普通、ボードに勝手に字が書かれることとかないからね?

『あはは★ね、きみここに来るのははじめてだよね!名前は?』

「千聖裕香です。はじめまして!」

『チサトユーカちゃんね★ユーカちゃんで良いかな?よろしく!』

「あの、今日はこのお店で…」

魔具を買いに来ましたー、ってことをカクカクシカジカ。

『おっけー、じゃあまずは、魔石を選んでもらわないといけないね★』

「魔石…って、何ですか?」

よく分かんないけど、この流れだと魔具に使われる物なのかな?

『わお!ほんとになーんにも知らないんだね!ソリエル嬢ちゃん、教えてあげてよ★』

「店長、相変わらず変な話し方だよな…ま、いいや。私が教えてやる!」

ソリエルはおほん!って凄い思わせぶりな咳払いをしたかと思ったら、結構ドヤ顔なのに、その割に凄く覚束ない説明が始まった。

「魔石には、えーーとなんだっけ、属性魔石と…そうだ、誕生石ってのがあるんだ。この二種類の違いはよく覚えてねぇ!」

「ダメダメじゃん!」

「うるせー!…そんで、じゃじゃん、私のはこれ!」

「どれ?」

ソリエルがごそごそしながら取り出したのは…手首ぐらいまでの長さのステッキ。そこに、たしかに何かの宝石が埋め込まれてあった。
凄く濃くて、深い青色。実際には見たこと無いけど、一言で言うなら深海!って感じの青色。

「この魔石の名前はな、えーーーと…ター…タコライス?だ!」

『ターコイズだよ!ぼくが選んであげたのに忘れるなんて酷いよ〜なにタコライスって、そんな別世界にありそうな食べ物の名前〜★』

ソリエル…もしかしておバカ?
っていうか、この世界にタコライス無いんだ。ちょっと残念。…じゃなくって!

「ええっと、じゃあわたしはどっちの石を選ぶべきなんでしょうか…?」

『ふむむ、ぼくは誕生石が良いと思うね。魔女って、大体初めての魔石は誕生石だからさ★!』

「なるほど。わたし11月生まれなんですけど、魔石は…」

わたし、誕生日と年齢、友達関係はちゃんと思い出したよ。進歩進歩。

『そうだね、だったら君には…シトリンがピッタリだ!★』

「シトリン?」

ヴィラさんが無言で指を指した方向にあったのは…オレンジっぽい黄色の、キラキラ輝く宝石!

「わ!綺麗〜!」

『11月の誕生石といえばトパーズ…だけど君にはこっちの方が似合うね★ぼくのオススメだけどどうかな?』

「凄く気に入りました!でもお金が…」

「ばーちゃんが出してくれるっしょ。そもそも魔女学校うんぬんはばーちゃんが提案したんだし。」

「うーーん、大丈夫なのかな…」

アイグレーさんの話だと、魔女が学校に入学する条件の最低条件…持っとかないといけない物は、この魔具と、あとは魔女服が必要みたいだし。

(これいつかお金返さないといけないんじゃ…今は考えたくないや…)

「ところで、そのソリエルの魔石はどっちの種類なの?誕生石?」

「………忘れた!ってか覚えてねー!」

『ターコイズは12月の誕生石!いい加減覚えてーー!』

「ええぇ…」

うん、やっぱりソリエルはお馬鹿なんだ。初対面の時、確か魔法も下手だって言ってなかったっけ?大丈夫なのか…?

『っていうか魔石の事なんて学校で習うじゃん。ソリエル嬢ちゃん、ちゃんと授業聞きなよ〜★』

「うーるーせー!!聞こえねー!!」

ぶーぶー言いながら耳を塞いだソリエルをにこにこ見ながら(目元が隠れてるからよく見えないんだけど)、ヴィラさんはこっちに向き直って営業モードに入ったみたい。

『さて。ご注文を承りました★明後日またここに来てよ!すぐに渡せるようにするから★』

「え!そんなにすぐに?」

もっと時間かかるって思ってた。だって、魔術を使うための道具を1から作るんでしょ?

「ユーカ、この時期に魔女が魔具なんか買う訳ねぇだろ?皆学校が始まる前にこぞって買うんだよ。今1月だぞ?そっちの世界は知らねえけど、学校始まるの四月からだし。」

ふん!って鼻息を鳴らしてドヤ顔のソリエル。名誉挽回が嬉しいのかも…

『その通り〜。その調子だと、これから学校に編入する気なんでしょ?でも今年のこの時期の編入者は〜…ほぼゼロ〜〜★なので暇!という訳なんだよね★』

(なるほど…だからそんなにすぐに…)

(店長テンションが2割増しくらいになったな…まじで最近客少なかったんだろーな…)

ふむ…って二人で頷いたら、もう帰っても大丈夫、って感じに、ヴィラさんが両手をひらひら振って、またボードを見たら、アドバイスが書かれてた。

『魔具っていうのは、魔女にとって超大事なアイテム!★だから、大事に使うんだよ〜またね〜』

「ばいばい店長〜」

「また明後日来ます〜!」

…よし。1つ目の魔具はこれでOK!すんなり手に入りそうで良かった!
帰り、アイグレーさんと合流できるかな?







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「あ!ソリエル…と、昨日の…」

「え?あ、エグシャとメドゥパーシー!」

「よぉ、エグシャ、メドゥパーシー!何やってんだ?」

ヴィラさんのお店を出た向かい側の道から現れたのは、昨日、出会い頭に襲ってきた不良魔女のお二人。普通に話したら良い人達だったお二人。
今日はマーバはいないんだ。って思ってたら、やれやれって感じでメドゥパーシーがエグシャを指さして言った。なんだか既視感。

「それがさ、エグシャが学校に忘れ物しちゃったんだよ。」

「忘れ物って?」

「ん、魔具。教室に置いてそのまま忘れてた!」

(え、魔具…??)

「いや魔具って魔女の超大事なアイテムじゃなかったの!!?」

わたしのツッこみが割りと大きめに、辺りに響き渡った。


次回「わたしのマジシャン・ライフ!」




















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記録者からのお知らせ



こんばんは、記録者のハノウです。今回は時間がないため、別途投稿する形ではなく、本編の最後にこうしてお知らせを挟ませてもらいます。

以前のお知らせ投稿の通り、10月中旬に突入したため、これから数週間ほど更新できません。

また、絵を描くのに使っていたChromebookが復活したので、少し先にはなりますが、今まで添付していなかった挿絵を随時追加していきます。

既に記録し終わった過去の本編記録にも何枚か添付予定ですので、過去の投稿もぜひチェックしてみて下さい。

因みにまだ途中ですが、完成次第添付予定の、今回のお話の挿絵の進捗はこちらです。ヴィラに煽られて不満げなソリエルです。



ソリエルは緑の瞳に茶髪ロングの可愛らしい不良少女です。ぜひ可愛がってあげてください。


今回のお話とお知らせは以上です。

それではまたお会いしましょう。

ハノウ


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